NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる フローレンス▪ウィリアムズ

30代は東京で働いていたりして、10回目の引っ越しで生まれ育った山のなかにある家に帰ってきて数年たちました。

若い頃は、山のなかにある家がとても不便でなんだか流行遅れのように感じたりしていましたが、歳をかさねる毎に自然溢れる山のなかの暮らしの素晴らしさに感動するばかりです。

自然の素晴らしさを、身体や心で感じていることを文字にすることは難しいのですが、この本はとても解りやすく書いてくれています。

長文ですが、ぜひ読んでお役立てください。😊🌏️🌲💓

NATURE FIX

自然が最高の脳をつくる

最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方

著者 フローレンス▪ウィリアムズ

から抜粋させていただきます。😊

裏表紙

野外で過ご過ごすと頭か冴えたり気がする?それは気のせいではありません。

自然の中で15分過ごせば血圧とストレスが低下して気分が良くなる一方、45分過ごせば、認知機能や活力、熟考する力が増し、3日間過ごせば創造性が50%向上するという驚きの実験結果も。

p14

本書は、詩人や哲学者には太古から自明であったこと、つまり「どこにいるか」が幸福度を左右するという事実の背景にある科学をさぐっていく。

アリストテレスは、野外を逍遙すれば頭が冴えると信じていた。

ダーウィン、ステラ、アインシュタインはみな庭や木立を歩きながら思索に耽った。

セオドア・ルーズベルトにいたっては、大自然のなかに数か月も逃げ込んだものだ。

p15

わたしたちの神経系は自然界に由来するさまざまな心地よさに共鳴するようにできている。

p16

室内で多くの時間をすごしているせいで、慢性の不調に悩まされ、近視、ビタミンD欠乏症、肥満、うつ病に苦しみ、孤独感や不安感にさいなまれている。

日光は網膜のドーパミン受容体を活性化させ、目の形状に影響を及ぼす。

p18

ただ外に出て、たいていは歩くだけ。

外に出られないと不機嫌になった。

足を動かしていると考え事がてきたし、それよりもっと歩きつづけると、たいてい頭がすっきりしてきた。

時には物書きとしてうまい言いまわしがふっと頭に浮かんだり、期せずして物事の本質が見えたりすることもあった。

p20

ジャーナリストのリチャード▪ルーブは、「ネイチャー▪ニューロン(自然の神経細胞)」という美しい言葉を編みだし、神経系と人間が進化してきた自然界には基本的なつながりがあることを強調した。

p34

日本の自殺率は世界で三番目に高い(一位は韓国で、二位はハンガリー)。

日本では四人にひとりが首都圏て暮らし、八七〇万人が毎日地下鉄を利用している。

p35

瞑想をすれば脳に変化が起こり、頭の回転が早くなり、人に思いやりをもてるようになり、人生のあれこれにもっと泰然としていられるようになる、

p41

修行僧が「これほどたくさんのものをどうやってご覧になっているのですか」と尋ねたところ、師は「目を閉じるのだ」と仰せになったという。

p43

自然のスライドを見た被験者の脳波ではアルファ波が高まることがわかった。

アルファ波とは、リラックスしているときや瞑想しているときなど、セロトニンの分泌量が増える時に活発になる脳波だ。

p46

ヒノキの香りが漂う部屋で睡眠を取った被験者は、三日後にNK細胞が二〇%増大した

そうした被験者は疲労感が軽くなったと報告した。

p51

ブッダ、イエス▪キリスト、リース▪ウィザースプーン(人生の再出発のためにロングトレイルを踏破する女性を描いたアメリカ映画『私に会うまでの1600キロ』の主演女優)はみな、知恵をさがしもとめて荒野に向かった。

p56

ほんの数日間自然のなかですごしただけで、五〇%も創造性が向上したのである。

p57

イリノイ大学の神経科学者アート▪クレイマー

運動をすれば加齢による認知機能の衰えを抑制できることを立身出世したからだ。

とくに記憶力、実行機能、空間認知のをつかさどる部位で、運動をすると新たな脳細胞が殖えるという研究結果は注目を集めた。

加齢による認知機能の衰えを防ぐには運動が最高かつ唯一の方法だと、ことあるごとに言われるようになっている。

p67

大自然を指し示した。「こういう場所にいれば、当然、脳にとって選択肢が減る。選択肢が減れば、高いエネルギーを必要とする物事に注意を向けられるようになる。」

p75

雄大な自然のなかを何日かかけてのんびり歩き、脳の実行ネットワークを休ませ、どこまでも広がる空に浮かぶ雲を眺めれば、脳にいいことが起こる。

三日もすれば、ああ、何かが変わったっと実感するはずだ。

ところが愚かにもそうした感覚に気づかない場合もある。

だが四日もすれば、いっそうリラックスして、もっと細かいことに気づくようになる。

自然のなかに身を置くと、最初の数日は数奇性効果の影響を受ける。

新しいバッグパックを背負ったり、ハイキング用の装備を用意したりと、ふだんとは違うものを身につけるからね。

だが、そうした目新しさも徐々に薄れていく。

数奇なものに注意を向けずにすむようになると、注意力を駆使しなくなる。

すると、脳のべつの部分を利用する余裕が生じる。

たとえばNBAのシカゴ▪ブルズとユタ▪ジャズの試合の日に、マイケル▪ジョーダンがインフルエンザにリカンベントしたことがあった。

チームの要であるジョーダンをメンバーから外すことはできない。

そして出場したジョーダンは、連続して三八点を獲得した。

それは、彼が無心だったからだ」

その時のジョーダンの実行ネットワークは機能していなかった。

だから直感だけで飛びまわり、いっそうめざましい活躍を見せた。

スポーツ選手や芸術家が簡単にフロー状態(没入状態)に入れることは、かなり前から知られている。

だが、ごく普通の人間も自然に触れるだけでその状態に入れるとしたら、それこそ期待をかきたてられる。

p80

自然のなかにいると前頭前野の酸素化ヘモグロビン(血中の酸素を運搬するヘモグロビン)濃度が低下し、活動が鎮静化することが確認されている。

MRIを利用したある研究によれば、自然の風景写真を見ている被験者の脳では、快感、共感、のびのびとした思考などと関連する島皮質や前帯状、皮質などに血液が流れることがわかっている。

いっぽう同じ被験者に都会の写真を見せると、不安や恐怖心と深く関わる扁桃体に血液が流れこんだ。

p91

腐りにくく、木肌にぬくもりがあり、いい香りのするヒノキは世界各地で重宝されてきた。

古代エジプトではミイラの棺に使われたほどだ。

ヒノキの板は真鍮より長持ちすると考えられ、プラトンが法を説いた著書の写本にも使われた。

p92

フィトンチッドはストレスを五三%ら減らし、血圧を五~七%も下げます。

土にも治癒効果があります。

土には抗菌作用がありますし、ゲオスミンはガンにも効果があるそうです。

ゲオスミンとは、雨上がりの地面から立ちのぼるあの土のにおいの原因になる物質だ。

ゲオスミンは土壌に含まれる有機化合物、とくにさまざまな抗生物質に欠かせないストレプトマイセス属の細菌によって産生される。

p103

フィトンチッドには殺虫成分が含まれているという事実

cideには「殺すもの」という意味がある。

p103

人間の鼻は一兆種類ものにおいを嗅ぎわけられるという。

においを本人が自覚していない場合もある。

寮の同じ部屋で生活している女性たちの月経周期が同調することはよく知られている。

互いにフェロモンを嗅ぎとっているのだ。

女性は男性よりにおいに敏感で、妊娠中はちょっとした危険もすぐに察知しなければならないため、嗅覚がさらに敏感になる。

母親はにおいだけで我が子を識別できるが、父親はそれができないと述べている。

馬や犬が恐怖に関わるにおいを嗅ぎわけるのは有名な話だが、人間にもそうした能力があるらしい。

p108

数千年前から、においや気分が行動や健康に影響を及ぼすことは知られていた。

p109

松の木に含まれるピノシルビン、ヒノキに含まれるテルペノイドはどちらも呼吸をうながし、穏やかな鎮静剤のような作用てわたしたちをリラックスさせる。

p110

ラベンダーやローズマリーなどの香りを嗅ぐと、被験者のコルチゾールの量が減り、心臓への血流速度が上がる(どちらも身体にいい)ことがわかっている。

「○○があると気分がよくなる」と信じていれば、実際にそうなることがある。

p115

子どもを森で二日間すごさせると、コルチゾール値が下がり、自尊心の評価が大きく改善し、その効果が二週間持続することがわかった。

この論文の筆頭筆者である忠南大学の森林環境▪健康研究所の朴範鎭によれば、森ですごすと幸福感が増し、不安が減り、将来について楽観的に考えられるようになるという。

「自尊心の高い子どもの方が、依存症になりにくいですね。」と朴はいう。

自身の研究結果に基づき、彼は一〇代前半の子どもたちに二週間に一度、半日以上、自然のなかですごすことを推奨している。

p123

クジラの大量死は、米海軍のソナーが原因だといわれている。

潜水艦が発する超音波が文字どおりクジラの脳を破壊するのだ。

p196

一九世紀の批評家ジョン▪らスキンは「静寂なる大気は甘美にあらず、音ともつかぬほどのものがあたりに息づくとき初めて心地よさが生まれるーー鳥が奏でる三連音符、低く高く鳴く虫の音があってこその静寂である」と記した

たいていの人は自然の音に癒されるが、とりわけ効果があるのは、風の音、水の音そして鳥のさえずりだ。

p149

オフィスの窓から自然の風景が見えると仕事の能率が上がり、仕事のストレスも減り、学校では成績やテストの結果がよくなり、都市部の住民の攻撃性が抑制されることがわかった。

p151

中庭の緑の豊かさの度合いと犯罪の発生件数に明らかな相関関係が見られた。

植生がほとんどない棟と比べて、中程度に草木が見える棟では犯罪発生件数が四ニ%も低くかった。

p175

近視の人と近視でない人のほんとうの違いは、戸外ですごす時間の長さだということだ。

日光がドーパミンの放出をうながし、その結果、眼球が楕円体になりにくくなるからだという。

p190

一か月に五時間、自然のなかですごすと、最大の効果が得られるという結果が出た。

p191

都会で暮らす人にとって、これは朗報だ。

町中の公園で一五分から四五分間すごせば、気持ちが前向きになり、活力が涌いて、ストレスを軽減できる。

公園の歩道が舗装されていようと、大勢の人がいようと、ときどき道路の騒音が聞こえてこようと効果があるのだ。

自然のなかですごす時間が長くなるほど、気分が明るくなるからだ。

p195

自然には即効性があるらしい、脈拍がゆっくりになり、副交感神経が優位になり、気持ちが穏やかになり、幸福感を覚えるねだ。

日本とフィンランドの実験では、血圧の低下、コルチゾール値の低下、気分の改善が一五~ニ〇分後に生じた。

四五~五〇分ほど自然のなかですごせば、被験者の多くに認知機能、活力、黙考する力の改善が見られた。

p197

ひとりで歩けばトレイル最大の効果が得られるそうだ。

とりわけ、ひとりで考え事をするには最適だという。

p198

自然のなかでひとりですごす時間は精神的に疲弊した人や社会的なストレスに苦しむ人の回復にとくに効果があるようだと記している。

p200

三〇分から四〇分の散歩で、生理的な変化が起こり、気分も変わって、おそらく注意力も上がるはずだ

どうやら、効果を上げるには一ニ週間必要らしい。

p203

オランダの研究により緑豊かな場所から約八〇〇メートル以内に暮らしている住民は、心身ともに自然から恩恵を受けていることがわかった。

糖尿病、慢性疼痛、片頭痛などに悩む人の数が少なかったのである。

ミッチェルは、緑豊かな場所と健康増進に相関関係がみられるのは、緑豊かな場所で暮らす住民が身体を動かしているためではないかと考えた。

自然のなかに身を置くと、たいてい活動的になり、酸素をいつもより大量に吸い込む。

すると猫背でデスクに向かっているせいでふだんは縮まっている肺や心臓の毛細血管が広がり、ゆっくりと死に向かうテロメアの行進を一時的に食い止めることができる。

運動は万病に効果があるという考え方は、オランダ人のあいだに深く浸透し、禁煙や手洗いに次ぎ、公衆衛生の大原則となっている。

二〇〇〇年初頭に発表された論文のなかには、身近に緑があると長寿、慢性疾患の減少、新生児の体重増加など、あらゆるとのにつながるなどという内容のものがあることがわかった。

p220

石を眺めていると気分が落ち着くことに気づいた。

「その石はまるで渇れに話しかけているようだった。『わたしは古来、ここにいた。そして永遠にここにいる。わたしの価値はわたしの存在そのものだ。きみがどんな人間で、なにをしようが、わたしの知るところではない。』....この感覚が彼の気持ちを鎮め、彼の心を調和で満たした。自分のいまの状況に、それほど重い意味などないように思えた。初期の人類が通りすぎていったそのはるか以前から、石はずっとそこに存在しているのだから。」

環境は人間の心理を構成するもっとも重要な基本的要素のひとつだ

p233

ベルガーはのちに休んでいるときやリラックスしているときにアルファ波があらわれることを突きとめ、さらにはベータ波が活発な思考や警戒を意味すること、ガンマ波は感覚処理を行っているときに優位になること、デルタ波は熟睡しているときに出ることなども発見した。

p237

一日に四〇分間、ゆったりとしたペースでウォーキングを続ければ、加齢による脳の認知機能の衰えを防げるうえ、実行機能と記憶力が向上し、判断力と行動力のスピードが増すという研究結果だった。

ほかにもいくつか脳を活性化させるための提言がある。遺伝子の損傷をなるべく避ける努力をすること、知的難題に挑みつづけること、そして人とつきあうことだ。

p242

スタンフォード大学の研究チームも自然のなかでウォーキングをする実験を計画した(スタンフォード大学は人間とテクノロジーの関係をーー育むことでーー変えてきたけれど、いまや人間にテクノロジーをやっかい払いさせる手助けをすることで知られているのだからおもしろい。

p243

反芻思考はうつ病や不安障害と結びつく。

悲観的なことを繰り返し考えていると、脳の膝下前頭前野ね呼ばれる部位が活性化するという。

この部位は、悲しみ、引きこもり、不機嫌といった感情と結びついている。

ある種の景色が、人間の気分を押しあげ、悲観的なことが繰り返し考えてはのたうちまわる脳の血流を鎮めたのだ。

世界はひろい。いくら頭のなかでぐずぐずと考えたところでそんなものはちっぽけな話だと、自然は告げている。

ほら、きみには回復力があるんだから、と。

いつまでもぐずぐずする幼児の注意をよそに向けてなだめようとする親のように、自然は自分以外のものにあなたの注意を向けさせる。

「自然のなかですごすと、都会ですごすのとは違い、反芻思考が改善されることがわかったのです」

p261

『崇高と美の観念の起源』哲学者エドマント▪バーグ

アイルランドの自然のなかを歩きまわり

「心が動かされた」

「自然界の偉大で崇高なものが生みだす情念は、もしもこれらの原因が最も強力に作用する場合には驚愕となる。驚愕とは或る程度の旋律を混じえつつ魂のすべての動きが停止するような状態をいう」

心から畏怖の念を覚えるには、「はてしない広がり」が必須で、なおかつ、人間にはそう簡単に理解できないものでなければならないと、バーグは考えた。

こうした畏敬の念があるからこそ、人間は謙虚になり、哲学者、聖職者、詩人が好んで使う「広い視野」をもてるようになる。

p262

畏怖の念を宗教的な概念から解放したバーグは、カント、ディドロ、ワーズワースに大きな影響を及ぼした。

彼らはみな、荘厳な美が人間の想像力と心眼を広げることに触れている。

『自然について』エマソン

「荒涼とした土地に立ち、頭を爽快な大気に洗わせ、無限の空気のなかにもたげる時、すべてのいやしい利己心は、なくなってしまう。

私は透明の眼球となる。

私は無であり、一切を見る」と綴った。

宗教とは無関係の超越感は、現代の環境保護運動にも息吹を吹き込んでいる。

アインシュタインは「わたしたちが体験できるもっとも美しいものは神秘的なものなのです」と言った。

畏怖の念はたんに強い感情というだけではなく、すべての感情のなかでとりわけ目立たないかたちで強い影響力を及ぼすそうだ。

よろこび、満足、共感、誇り、愛、愉楽などと同様、ポジティブな感情の核をなすものとみなされていた。

p265

ダーウィンは、人間の最強の本能は共感や思いやりだと言った。

p266

宇宙空間から見た地球の映像だ。

こうした光景を見た宇宙飛行士は、宇宙空間に浮かぶビー玉のような地球とその表面に暮らす人類への愛で胸がいっぱいになったという。

その感覚は、仏教でいうところの涅槃の境地のようなものかもしれない。

万物への愛で胸が満たされ、あらゆる欲望が消滅した至福を味わうのだ。

p282

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の根本には記憶障害がある。

トラウマとなっている根深い記憶が海馬を萎縮させているらしい。

またPTSDにより、感情面での問題のみならず認知機能にも問題が生じ、集中力の低下や短期の記憶障害を招くことはよく知られている。

慢性的に強いストレスは、生理学的には高血圧、細胞の炎症、心臓病リスクの増大を招くと考えられている。

p291

アメリカでは昔から、傷を負った兵士は荒野に向かうと言われているけるれど、それも不思議ではない。

とくにヴェトナム戦争後、都会では自分たちの心情がまったく理解されないと感じた多くの帰還兵が、こうした辺境の地で大きな安らぎを得た。

p292

「大自然のなかに身を置いているうちに、ごく自然に心情を吐露できるのがいちばんいい。自然にはそういう気持ちにさせる力がある。」

p294

「木を見ていると、受容することがいかに大切かがわかる。変容していくことも」

つづく

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